はじめに
交通事故で頭部に強い衝撃を受けたり、意識を失うほどの怪我を負った場合、その後高次脳機能障害を発症するリスクがあります。外見上の怪我が目立たなくても、「事故のあとからどうも記憶力が落ちた」「注意力や集中力に難がある」「感情コントロールが効かない」といった症状が出ることがあり、これらが家族や職場にも大きな影響を及ぼします。そこで疑問になるのが、「どのような病院・科を受診すればよいか?」という点です。
本稿では、高次脳機能障害を疑った場合に適切な受診先として考えられる、脳神経外科・リハビリ科・専門外来などを取り上げ、どのような治療・検査が行われるのか、その選び方や注意点を解説します。検査や診断を受けられずに見落としが続くと後遺障害の認定にも不利に働くため、事故後に少しでも頭部外傷や認知障害が疑われる場合は、早期に専門医を訪ねることが重要です。
Q&A
Q1:高次脳機能障害を疑ったら、まずどの診療科に行けばいいでしょうか?
まずは脳神経外科や神経内科など、頭部の損傷を診察できる科が候補です。頭痛や意識障害が急性期にあるなら、救急搬送や総合病院で診てもらうのが早いです。その後、リハビリ科や高次脳機能障害専門外来を紹介してもらう流れが一般的です。
Q2:脳神経外科では主にどんな検査を受けられるのですか?
CTやMRIなど画像検査が中心です。頭部外傷による出血や脳挫傷がないか確認します。ただし、びまん性軸索損傷など微細損傷は映らない場合も多く、神経心理学的検査は別途リハビリ科や専門施設で受けることが多いです。
Q3:リハビリ科(リハビリテーション科)ではどのような対応があるのでしょう?
高次脳機能障害に特化した作業療法(OT)や言語聴覚療法(ST)、神経心理学検査が行われる施設があります。認知機能の低下を把握し、改善や補償のための訓練を実践する拠点として重要です。医師・作業療法士・言語聴覚士などのチームが協力して治療に当たります。
Q4:専門外来(高次脳機能障害外来)は全国にあるのですか?
全国にいくつかの専門病院やリハビリテーションセンターがあり、高次脳機能障害外来を開設している施設もあります。ただし地域によっては数が限られ、通院が大変な場合もあるので、通いやすさなども考慮して選ぶ必要があります。
Q5:事故後しばらくしてから「もしかして高次脳機能障害かも?」と思った場合、改めて脳外科を受診してもいいでしょうか?
可能です。受傷直後に気づかなくても、数ヶ月経って認知障害の兆候が出てきたら改めて脳神経外科や専門外来を受診して検査するケースもあります。弁護士と相談しながら、保険会社との交渉も並行して進めると良いでしょう。
Q6:どのように病院や専門外来を探せばいいか分かりません。どんな方法がありますか?
主治医やリハビリ担当医に相談して紹介してもらうのが一般的です。あるいは、脳外傷支援団体や地方自治体の障害福祉担当に問い合わせると、専門医療機関をリストアップしてくれる場合があります。弁護士が医療ネットワークを認識していることもあり、それを頼るのも一つの方法です。
解説
脳神経外科(神経内科)の役割
- 頭部外傷の急性期対応
- 事故直後に外傷性脳損傷の有無を確認し、CTやMRIで脳挫傷、血腫、骨折などを診断。
- 意識障害など重症の場合、救命措置とともに脳外科手術(血腫除去など)を行う。
- 慢性期の再検査
- 頭部外傷後しばらく経過観察し、後遺症が出ていないか確認。
- 軽度外傷でもびまん性軸索損傷などで認知障害がある可能性があれば、MRIや拡散強調画像(DTI)など詳細検査を追加。
- 他科との連携
- 高次脳機能障害の疑いがあれば、リハビリ科や専門外来へ紹介し、認知機能検査を実施してもらう。
- 言語聴覚士や作業療法士、臨床心理士とのチーム医療。
リハビリテーション科(リハビリ科)での対応
- 作業療法(OT)
- 高次脳機能障害の日常生活動作(調理、買い物、家事など)における支障を改善・補償する訓練。
- 実際の動作を通して注意や記憶、遂行機能を再学習し、自立度を高める。
- 言語聴覚療法(ST)
- 記憶・注意・言語理解などを言語聴覚士が訓練。コミュニケーションの改善や社会復帰支援を行う。
- 病院内のデイケアや外来リハビリで行われるケースが多い。
- 神経心理学的検査
- WAIS-Ⅳ、WMS-R、Trail Making Testなどで認知機能を客観的に評価し、結果を治療や後遺障害認定に役立てる。
- その検査結果を基に、個別リハビリプログラムを作成。
- 生活指導・社会復帰支援
- 病院内で社会適応訓練を行い、家族や本人にも認知障害に対する対処法を指導。
- 地域の福祉サービスや障害者雇用制度などと連携。
専門外来・専門施設の利用方法
- 高次脳機能障害外来
- 大学病院やリハビリ専門病院に専用外来を設置しているところがあり、神経心理学検査やリハビリを受けられる。
- 待ち時間や通院距離がネックになる場合もあるので、事前に予約やアクセス方法を確認。
- 医療ソーシャルワーカーとの連携
- 病院の医療ソーシャルワーカーが、介護保険や障害者手帳取得の手続き、地域の支援サービスなどを案内してくれる。
- 弁護士や行政機関との調整役になるケースも多い。
- 弁護士の医療ネットワーク
- 交通事故案件を多く扱う弁護士事務所は、脳外傷や高次脳機能障害に精通した医師や検査機関との繋がりを持っている場合がある。
- 受診先を紹介してもらい、後遺障害認定に必要な検査や書類作成をスムーズに進められる可能性。
弁護士に相談するメリット
- 適切な診断・リハビリ受診先を確保
弁護士が医師や専門施設の情報を把握しており、効率的に精密検査を受けられる体制を整えやすい。 - 保険会社への正当な説明
転院やリハビリ専門外来の利用を保険会社が渋る場合、弁護士が医学的根拠を提示して治療継続を認めさせる交渉を代行。 - 後遺障害等級認定サポート
頭部外傷が軽微に見えても、高次脳機能障害を立証するためにMRIや神経心理学的検査など必要手続きを指示し、保険会社の過小評価を防ぐ。 - 高額賠償の獲得
重度の場合、介護費用、逸失利益が莫大になる。弁護士が裁判所基準で算定し示談交渉を有利に。 - 弁護士費用特約
長期リハビリ案件で弁護士費用が高額化しても、特約があれば自己負担ゼロで依頼可能。
まとめ
高次脳機能障害が疑われる際の受診先としては、
- 脳神経外科・神経内科
まず画像検査や急性期治療 - リハビリ科(OT・ST)
神経心理学検査、認知リハビリ、社会適応訓練 - 専門外来・専門施設
総合的に高次脳機能障害を扱う外来、専門病院・リハビリセンター
が挙げられます。
事故後しばらく経ってから気づく認知障害でも、適切な医療機関にかかることで症状を把握し、後遺障害等級認定やリハビリが進めやすくなります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、医療ネットワークを活用し、脳損傷が疑われる被害者に検査・診断書作成のサポートを行い、保険会社への正当な主張を後押ししています。
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