はじめに
むち打ち損傷(頸椎捻挫)は、交通事故の代表的なケガとして頻繁に見られますが、実際の診察で画像検査(レントゲン・MRI・CT)を行っても「異常なし」とされるケースが多いです。しかし、画像所見がなくても首の痛み、肩こり、頭痛、しびれなどの症状が長期化する例は珍しくありません。保険会社が「画像で異常がないから軽症だ」と決めつける場合もあり、後遺障害認定や示談交渉で困難が生じがちです。
本稿では、むち打ちの検査方法(レントゲン・MRI・CT)で何が分かるのか、そして診断書のポイントとして医師にどのような記載をお願いすべきかを解説します。特に、画像に写らない微細損傷に対応するための神経学的テストや医師の診断書の書き方が、保険会社との交渉で大きな意味を持ちます。正確な診断を受け、適切な書類を整えることで、後遺障害の認定や示談金の大幅アップにつなげることができるでしょう。
Q&A
Q1:レントゲンでは骨しか映らないと聞きました。むち打ちをレントゲンで確認できるのですか?
レントゲンは骨の変形や骨折をチェックするのがメインなので、筋肉・靱帯の捻挫であるむち打ち自体は「異常なし」とされることが多いです。ただし、頸椎の配列異常(ストレートネック化など)を確認する参考になる場合もあります。
Q2:MRIはどんな情報が得られるのですか?
MRIでは軟部組織(筋肉、椎間板、神経、靱帯)もある程度描出されるので、神経根の圧迫や椎間板の変性などが確認されることがあります。ただし、むち打ちの軽微な炎症や微小損傷は写らない場合も多く、「異常なし」となるケースが珍しくありません。
Q3:CT検査はどう違うのでしょう?
CTは骨の状態を3D的に捉えやすく、骨折や骨の形状異常を詳細に把握できるのが特徴です。筋肉や軟部組織はMRIほど明確ではなく、むち打ちの軽微な損傷を見つけるには向いていません。
Q4:結局、レントゲンやMRIに映らないと「軽いケガ」と保険会社に言われるのでは?
はい、そう主張されがちです。しかし、画像に異常がなくてもむち打ち症状が実際に長期間続くケースは多々あり、裁判例でも神経学的検査や経過観察で後遺障害認定が認められています。画像所見=全てではないことを理解する必要があります。
Q5:診断書でどう書いてもらうと、後遺障害認定で有利になるのでしょう?
症状の一貫性、神経学的検査(ジャクソンテストやスパーリングテストなど)の所見を詳細に記載してもらうことが重要です。痛みやしびれが具体的にどの範囲で、どういう動作で悪化するのか、日常生活でどんな支障があるか、事故との因果関係を明確に示す内容が望ましいです。
Q6:医師が忙しく、詳しく書いてくれない場合はどうすれば?
弁護士に相談すれば、後遺障害診断書に必要な事項や神経学的テストの結果を医師に確認し、適切に記載してもらうよう依頼できます。事前に診断書作成ガイドなどを準備して医師に提示することで、記入漏れを防ぎやすくなります。
解説
レントゲン・MRI・CTの特徴
レントゲン
- 長所
撮影が安価で手軽。骨折や頸椎配列異常(ストレートネックなど)の有無を確認しやすい。 - 短所
軟部組織(筋肉、靱帯)はほぼ映らない。むち打ち損傷の直接所見は得にくい。
MRI
- 長所
軟部組織や椎間板、神経根の圧迫を可視化可能。神経根症状型むち打ちの判断に有用。 - 短所
微細な炎症やしびれの原因を全て映し出せるとは限らない。検査費用が高く、時間もかかる。
CT
- 長所
骨折や骨の形状異常を3次元的に捉えやすい。関節面の損傷などが判別しやすい。 - 短所
軟部組織の描出はMRIほど得意ではない。被ばく量もレントゲンより多い。
神経学的テストと症状経過
- 神経学的検査の意義
- ジャクソンテスト、スパーリングテストなどで神経根の刺激を確認し、腕や手指のしびれが誘発されるかを見る。
- これらのテストが陽性なら、客観的に神経根症状があると判断しやすく、保険会社も軽視しにくい。
- 症状経過の記録
- 痛みやしびれが日常生活にどれほど影響しているか、日誌や家族の観察で具体的に記録しておく。
- 勤務先や学校での作業効率低下など客観的証言があると、後遺障害申請時に有力な裏付けとなる。
- 事故との因果関係
- 事故直後から数日・数週間後にかけて、首の痛みやしびれが継続している事実を医師のカルテに残す。
- 「後から症状が出てきた」場合でも、できるだけ早く受診し、「事故が原因の可能性」を明記してもらうことが重要。
診断書のポイント
- 症状の具体的記載
- 単に「頸椎捻挫」と書くだけでなく、痛みの部位・範囲、しびれの有無、頭痛・めまいなど自律神経症状も詳しく書いてもらう。
- バレ・リュー型の疑いがあれば耳鳴り、めまいの記載を漏れなく。
- 神経学的検査所見
- ジャクソンテスト陽性、スパーリングテスト陽性、筋力低下、腱反射の異常などを数値や所見で記入してもらう。
- 後遺障害診断書に反映しやすく、神経症状の一貫性を示せる。
- 画像検査の結果
- 異常なしの場合も、「配列異常なし」「椎間板ヘルニアなし」などの所見を明確に書く。逆にわずかでも所見があるなら見逃さない。
- MRIで神経根圧迫疑いがあるなど、軽度でも異常が確認されたら詳細に書いてもらう。
- 症状経過と治療内容
- 治療期間や通院頻度を明記し、痛みの推移やリハビリの効果なども含め、後遺障害を考慮した記載をお願いする。
- 症状固定時点で痛みやしびれがどの程度残っているかを、「事故前にはなかった」と明確に示すことが重要。
弁護士に相談するメリット
- 打ち切り対策
「画像上異常なし」として保険会社が3ヶ月程度で打ち切りを迫ってきても、弁護士が医師の見解をサポートし継続治療を認めさせる交渉を代行。 - 後遑(こうい)障害等級申請サポート
むち打ちでも長期に神経症状が残る場合は14級、12級が狙える。弁護士が神経学的検査や診断書の整備を主導。 - 示談金アップ
むち打ちで自賠責基準より低い金額を提示されがちだが、弁護士が裁判所基準を適用し、慰謝料を大幅に引き上げる。 - 費用特約の利用
むち打ちは軽症とみなされがちだが、後遺症が残れば示談金が数十万円以上増える可能性がある。弁護士費用特約があればリスクなく依頼できる。
まとめ
むち打ち(頸椎捻挫)の検査方法は主にレントゲン・MRI・CTですが、微細損傷が映らないことも多く、
- レントゲン
骨折や配列異常を確認 - MRI
神経根圧迫や椎間板の状態を把握 - CT
骨の3D把握に有用だが軟部には弱い
加えて、神経学的テストや症状経過の記録が極めて重要です。医師の診断書には具体的な痛み・しびれ・検査所見を詳述してもらい、後遺障害等級を確保するために弁護士のサポートが大きく役立ちます。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、保険会社による早期打ち切りや過小評価を防ぎ、長期化しやすいむち打ち症にも適切な後遺障害認定と示談金を得られるよう支援します。
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