はじめに
むち打ち(頸椎捻挫)は、首の痛みや肩こり、頭痛、しびれなど多彩な症状が比較的長く続くことが多いのが特徴です。しかし、保険会社は「軽微な外傷」であるとみなしがちで、3ヶ月~6ヶ月ほどで治療打ち切りを打診してくる例も珍しくありません。そこで問題になるのが、「症状固定」をいつとするかというタイミングです。症状固定とは医師が「これ以上大きく症状が改善する見込みがない」と判断する時点であり、後遺障害認定に進む重要なステップでもあります。
本稿では、むち打ち損傷における症状固定のタイミングと、後遺障害認定の可否に関わる留意点を解説します。特に「まだ痛みが続いているのに、保険会社から早期症状固定を迫られる」「医師が早々に治療終了を勧めてきたが、本当にそれでいいのか」と悩む被害者は多いです。早期症状固定のリスクと、医師との連携の重要性を押さえ、後になって後遺障害等級が非該当となってしまう不利益を避けましょう。
Q&A
Q1:そもそも「症状固定」って何ですか?
症状固定とは、医師が「現在の治療を続けてもこれ以上大きな改善が見込めない」と判断するタイミングです。傷害(治療)から後遺障害(症状固定後)へステージが移る節目であり、その後は後遺障害認定に向けた診断書の作成・申請手続きに進みます。
Q2:むち打ちでは、どのくらいの期間で症状固定とされるのが一般的でしょう?
平均的には6ヶ月程度で症状固定とされる例が多いですが、個人差が大きく、実際には1年近く通院する方もいます。痛みやしびれが続くなら、医師と相談しながら治療継続を図ることが重要です。
Q3:保険会社が「もう症状固定でいいですね」と言ってきたら、従わなければいけないのでしょうか?
保険会社には症状固定の時期を決定する権限はありません。医学的には担当医師の判断が最も重要であり、保険会社の都合で強制的に打ち切ることはできません。弁護士を介して「まだ改善の余地がある」と主張し、継続治療を認めさせる交渉を行うのが一般的です。
Q4:医師から「もう治らない」と言われても、痛みやしびれが続いている場合はどうしたら?
その場合、後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害等級申請に進む形が通常です。もし納得できないならセカンドオピニオンでほかの整形外科医に診てもらう選択もあります。弁護士に相談すると専門医を紹介してくれることも多いです。
Q5:むち打ちで後遺障害が認定される場合、主に何級が多いですか?
最も多いのは14級9号(局部に神経症状を残すもの)で、症状がやや重ければ12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)が認められることもあります。いずれも医学的根拠(神経学的検査所見など)と症状の持続がカギとなります。
Q6:もし症状固定後に症状が悪化したら、後から変えられるのですか?
一度症状固定とした後でも、「悪化」がはっきり見られれば、再度診断を受け後遺障害等級の変更(再申請)を試みる方法があります。ただし、再発や悪化の医学的立証は簡単ではないため、弁護士と相談して慎重に進める必要があります。
解説
早期症状固定のリスク
- 保険会社の打ち切り圧力
- むち打ちを「軽微」とみなし、3ヶ月程度で治療費を打ち切ろうとする事例が多い。
- まだ痛みやしびれが改善傾向にあるのに症状固定を強制されると、本来受けられる賠償(後遺障害認定や適切な示談金)が大きく削られる可能性がある。
- 後遺障害の認定が難しくなる
- 早期に症状固定とされると、通院実績や神経学的所見の裏付けが不十分になり、後遺障害申請で「非該当」になるケースも。
- 実際には改善が見込める時期でも固定とされると、痛みが残ってしまっても保障を受けにくい。
- 保険会社のメリット vs 被害者の不利益
- 早期症状固定は保険会社にとって支払う治療費が減るメリットがあるが、被害者にとっては治癒の機会を奪われ、後遺症が残るリスクが高い。
- 医師が「まだ治り切っていない」と言うなら、強く主張すべき。
医師との連携と症状固定の判断
- 定期的受診と症状の報告
- 「痛みがあるが通院が面倒」と自己判断で中断すると、保険会社から『症状が軽いから通院しない』と思われるリスク大。
- 痛みやしびれを的確に医師に伝え、カルテに残してもらうことが大事。日常の困りごとも含めて詳細に説明を。
- 神経学的検査・画像検査
- 痛みのメカニズムを医学的に説明できれば、症状固定を遅らせて治療を継続する根拠になる。
- MRIや神経学テストで炎症や神経根症状を確認し、医師が「まだ改善の余地がある」と判断してくれれば治療を続けやすい。
- 医師が症状固定を提案したら
- 医師が「これ以上改善は期待できない」と明確に言えば、後遺障害診断書を作成して後遺障害等級申請へ進む。
- ただし、被害者が「まだ痛みが強い」と感じるなら、セカンドオピニオンを受けるのも一つの手段。弁護士に相談すると紹介してもらえる場合がある。
後遺障害認定の可否
- 14級9号・12級13号が中心
- むち打ちでは14級9号(神経症状が医学的に裏付けられないが、症状の持続がある場合)が多い。
- 神経学的検査陽性やMRIで神経根圧迫が確認されると12級が認められる可能性も。
- 通院実績と一貫した症状報告
- 後遺障害認定で重要なのは、症状が途中で消失したり、通院期間が飛び飛びではなく、一貫して痛み・しびれが継続していた事実。
- 症状固定までの通院日数や診断内容が不十分だと、保険会社が「本当に痛いのか疑問」と反論。
- 弁護士の書類整備
- 弁護士が後遺障害診断書や神経学的所見を取りまとめ、事故との因果関係を明確に示すことが、認定獲得の可否を左右する。
- 非該当となっても異議申立を行い、追加証拠で認定を逆転する例もある。
弁護士に相談するメリット
- 治療継続の確保
保険会社の「軽症扱い」や「早期打ち切り」に対抗し、医師の意見書などを用いて交渉。必要な治療が受けられるよう支援。 - 後遺障害申請サポート
症状固定後に後遺障害診断書を的確に作成し、14級・12級などを狙う。医師との連携が不十分だと非該当になる例が多いが、弁護士介入で成功率が上がる。 - 示談金アップ
むち打ちは“軽症”とみられがちだが、弁護士が裁判所基準で慰謝料を算定し交渉すれば、保険会社提示より数十万円~百万円以上増額できる場合がある。 - 異議申立・裁判対応
非該当時や低い等級の決定に納得いかない場合、弁護士が異議申立や訴訟で再検討を求める。 - 弁護士費用特約
むち打ちでも後遺障害認定が取れれば示談金は大きく変わる。特約があれば自己負担なしで弁護士を依頼可能。
まとめ
むち打ち損傷においては、
- 症状固定のタイミング
保険会社の思惑で早期に固定とされると、治療不十分・後遺障害非該当リスク - 医師との連携
症状の一貫性と改善見込みを医師に伝え、通院実績や神経学的所見をカルテ・診断書にしっかり残す - 後遺障害認定の可否
14級9号や12級13号が中心だが、正しい診断書・検査結果がないと非該当になりやすい - 弁護士のサポート:打ち切り防止、異議申立、示談金アップなど総合的な交渉
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、むち打ち損傷における症状固定のタイミングに関する保険会社トラブルを多数解決し、後遺障害認定に必要な手順をサポートしています。首の痛み・しびれが続く場合は、十分な治療を続けつつ、保険会社の打ち切り圧力に負けないよう、早期にご相談ください。
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