はじめに
交通事故によるむち打ち損傷(頸椎捻挫)は、首や肩の痛みだけではなく、頭痛・めまい・吐き気など多彩な症状を伴うことがあります。これらは二次障害とも呼ばれ、首周りの筋肉や自律神経、脳血流などが影響を受けるために生じるものです。しかし、見た目には分かりにくく「気のせい」「軽い症状だ」と周囲に理解されないことも多く、保険会社からも軽視されがちです。
本稿では、むち打ちが原因となって起こり得る頭痛・めまい・吐き気などの二次障害を中心に、なぜこれらの症状が発生するのか、どのように対処・治療するかを解説します。また、保険会社が「首の捻挫だけでそんな症状はおかしい」と言ってくるケースもあり、後遺障害認定や示談交渉で揉める場合も少なくありません。二次障害を医学的に正しく捉え、長引く不快症状を軽視されないためのポイントを押さえておきましょう。
Q&A
Q1:むち打ちなのに、どうして頭痛やめまいが起こるのですか?
首周りの筋肉や靱帯が損傷した結果、血行不良や神経刺激が発生し、頭部に十分な血液が届きにくくなるなどのメカニズムが考えられています。また、頸椎周辺の自律神経が乱れることで、めまいや吐き気など自律神経症状が生じるケースもあります。
Q2:バレ・リュー型(後部交感神経症候群)とも関係があるのでしょうか?
はい。バレ・リュー型むち打ちでは、後部交感神経が影響を受けることで頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気などの自律神経症状が強く出るのが特徴です。レントゲンやMRIに異常が写らないため、軽視されがちですが、症状は実際に長引く場合も多々あります。
Q3:首の痛みが落ち着いてきたのに、頭痛や吐き気だけが続くことはあり得ますか?
あり得ます。首の筋肉や神経の炎症が部分的に治まっても、神経調整が乱れた状態や首の可動域不良が続いていると、頭痛や自律神経症状が長引くことがあります。リハビリや姿勢矯正、必要に応じて鍼灸などの補助療法で改善を図ることが重要です。
Q4:こうした二次障害だけで後遑障害が認められる可能性はありますか?
首の痛みだけではなく、頭痛・めまい・吐き気など神経症状が継続している場合、14級9号や12級13号が認められる可能性があります。MRIや神経学的検査で軟部組織や神経根の損傷が示唆されれば、後遑障害等級取得の確率が上がります。
Q5:保険会社が「首の捻挫でそんな症状は普通ない」と主張してきたら、どう対抗できますか?
医師の意見書や神経学的検査、さらにバレ・リュー型の解説文献などを提示して、痛みやめまいの医学的根拠を示します。弁護士と連携して過去の裁判例を参考に「むち打ちによる二次障害が認められた事案」を示せば、保険会社も軽視しづらくなります。
Q6:頭痛・吐き気がひどい場合、どのような治療が考えられますか?
まずは整形外科や神経内科で検査し、脳や頸椎に重大な異常がないか確認。そのうえで、理学療法(首周りの温熱や電気治療)、鍼灸、必要に応じて自律神経を安定させる薬を使うことがあります。医師や作業療法士と相談しながら姿勢矯正や軽い運動療法を行うことも有効です。
解説
二次障害が生じるメカニズム
- 血行不良・筋緊張
- 首周辺の筋肉が緊張し、頭部や耳への血流がスムーズにいかないと頭痛・耳鳴り・めまいが起こりやすくなる。
- 首を動かすと痛みが強まるため姿勢が悪くなり、さらに筋肉が凝り固まる悪循環も。
- 自律神経の乱れ
- むち打ちで首の交感神経が刺激され、血管収縮や心拍変動など不安定な状態に。
- めまい・吐き気・頭重感など、自律神経症状が強く出て日常生活が困難になるケースがある。
- 脳脊髄液の循環障害
- 頸椎の可動域が悪化し、脳脊髄液の循環に影響が出ると、頭蓋内圧が変動して頭痛や耳鳴り、倦怠感を感じるとの説もある(科学的には諸説あり)。
具体的な二次障害の例
- 頭痛(締め付けられるような痛み、偏頭痛様)
- 事故後、首周りの筋肉・靱帯が炎症を起こし、神経が過敏になることで頭痛が続く。
- 首を回すと拍動性の痛みが広がる、天候や気圧変化で頭痛が悪化する例も。
- めまい・ふらつき
- 自律神経が乱れ、内耳や脳幹へ十分な血流がいかない場合が考えられる。
- 立ち上がり時のふらつきや歩行不安、車の運転が怖くなるなど日常活動に支障が及ぶ。
- 吐き気・耳鳴り
- バレ・リュー型(後部交感神経症候群)によくみられる。
- なんとなく気分が悪い、耳の奥が詰まった感覚がある、周囲の音が響く感じがする。
- 視力低下・集中力減退
- 首こりや頭痛の影響で視力が落ちたように感じる、パソコン作業が集中できない、長時間同じ姿勢だと痛みが増すなど、仕事効率が下がる。
示談交渉・後遺障害認定への影響
- 保険会社の「そんな症状は誇張」主張
- むち打ちの二次障害は画像に映りづらく、保険会社が「首の捻挫で頭痛やめまいは大げさだ」と否定しがち。
- 医師の意見書や神経学的検査結果、症状日誌などを活用し、症状の実在を証明する必要がある。
- 通院実績と一貫性
- 二次障害がある場合も、整形外科だけでなく必要に応じて耳鼻科・神経内科など専門科を受診し、カルテに自覚症状を記録してもらう。
- 事故後しばらくして頭痛やめまいが出たなら、「いつ頃から出て、どう悪化しているか」を医師と連携してカルテ化すると説得力が増す。
- 後遑障害認定での立証
- 首の痛みと合わせて頭痛やめまいが持続しているなら、14級9号や12級13号の可能性がある。
- 神経学的所見(ジャクソンテスト、スパーリングテスト)だけでなく、めまい検査を行っている耳鼻科の医師の所見などを活かすことが大切。
弁護士に相談するメリット
- 多科受診のアドバイス
弁護士が、頸椎の痛みだけでなく頭痛・めまいがあれば耳鼻科や神経内科も受診すべきだと指南し、適切な診療科に誘導。 - 保険会社対応で二次障害を認めさせる
「むち打ちに伴う頭痛や吐き気」を軽視する保険会社に対し、医師の意見書や症状日誌などを提示し、治療費打ち切りを阻止。 - 後遺障害診断書の作成
症状固定になった際、首の痛みだけでなく頭痛や吐き気をどう記載してもらうかを弁護士が医師と調整し、後遺障害申請で有利になるようサポート。 - 裁判所基準で示談金増
二次障害が示談金算定にも影響する場合、弁護士が裁判所基準を適用して増額を狙う。 - 弁護士費用特約
むち打ちの二次障害案件でも特約があれば費用負担ゼロまたは大幅に軽減して依頼することが可能。
まとめ
むち打ち損傷で起こりやすい二次障害として、
- 頭痛
首の炎症による血行不良や神経刺激 - めまい・吐き気
自律神経の乱れやバレ・リュー型の影響 - 耳鳴り、視力低下感、集中力減退
脳や耳への血流障害・神経過敏など
が挙げられます。保険会社は「首の捻挫と関係ない」と言いがちですが、医学的には関連性が認められる事例も多数存在し、症状が長引くと後遑障害に発展することも少なくありません。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、むち打ちの二次障害(頭痛・めまい・吐き気など)を軽視させず、治療費継続や後遺障害認定に結びつける交渉を行っています。首の痛み以外の症状が続く方も決してあきらめず、早めにご相談ください。
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