はじめに
むち打ち損傷(頸椎捻挫)は交通事故で最も多く見られる外傷の一つで、首の痛みやしびれ、頭痛などが長期間続く場合も珍しくありません。しかし、レントゲンやMRIに異常が映りづらいため、保険会社や裁判所に症状を理解してもらいにくいのも現実です。それでも、適切に通院実績を積み重ね、神経学的検査や医師の診断書を整備すれば、後遺障害14級(あるいは12級)が認められ、高い示談金を得る事例も多々あります。
本稿では、実際のむち打ち事例や判例で、どのように14級認定に至ったのか、さらには高次脳機能障害の疑いで症状が拡大認定されたケースなどを紹介します。具体的な判例や事例を知ることで、被害者が保険会社の過小評価に対抗し、より有利に示談金を引き上げる戦略を学べるでしょう。
Q&A
Q1:むち打ちで14級認定を受けた事例では、どんなポイントが重視されましたか?
主に神経学的検査(ジャクソンテスト・スパーリングテスト等)の陽性結果や、症状の一貫性(事故後から症状固定まで、首の痛み・しびれが持続しているカルテ記載)が大きな要素になります。画像所見がなくても、医師の客観的所見があれば14級9号に認定された例が多数あります。
Q2:軽度のむち打ちだったのに、裁判で数百万円の賠償が認められたケースは本当にあるのですか?
はい。たとえば、通院期間が半年~1年以上にわたり、医師が「日常生活で支障がある」と診断した結果、14級が認定され、後遺障害慰謝料・逸失利益を含め数百万円規模の示談金となった事例があります。裁判基準を適用すれば保険会社の最初の提示を大きく上回ることが多いといえます。
Q3:むち打ちから高次脳機能障害と診断されたケースもあるのですか?
事故時に首だけでなく頭部にも衝撃が加わり、軽度の脳損傷が発生していた場合、むち打ち症状と併発するかたちで頭痛、記憶障害、注意障害などが表れる例がある。画像や神経心理学的検査を通じて高次脳機能障害と診断され、より高い後遺障害等級を取得する可能性があります。
Q4:どのような事例で12級13号が認定されたのでしょう?
たとえば、MRIで椎間板や神経根の軽い圧迫所見があり、ジャクソンテストでしびれが誘発されるなど明確な神経症状が確認され、痛み・しびれが頑固に残った事例で12級13号が認められました。後遺障害慰謝料も14級より大幅に高くなります。
Q5:もし非該当となったら、過去の判例や事例を引用して異議申立できるのですか?
はい。過去に似た症状・通院実績の事例で認定が得られた判例を提示し、「本件でも同様に認められるはず」と論じる異議申立は有効です。ただし判例は一つの参考であり、医師の追加意見書や検査結果とセットで提出するのが成功のカギとなります。
Q6:実際に示談が成立した事例で、むち打ち14級認定ならどのくらいの最終金額になるのでしょう?
通院期間や収入等により幅がありますが、傷害慰謝料(通院分)で数十万~100万円以上、後遺障害慰謝料(14級で110万円前後が裁判所基準)と逸失利益を合わせ、合計200万~300万円以上になる事例があります。保険会社の提示を鵜呑みにせず、弁護士に相談することで大きく増額することも可能です。
解説
むち打ち14級認定の代表事例
- 通院6ヶ月、画像異常なし
- 事故後すぐ首の痛みを訴え、週2回程度整形外科で理学療法を受けつつ、神経学的検査で軽度陽性が確認された。
- 症状固定後、医師が「痛みが持続しており、回復がこれ以上望めない」と診断書に明確に記載 → 14級9号認定。
- 慰謝料は裁判所基準で傷害慰謝料約80万円+後遺障害慰謝料約110万円 → 合計190万円前後。
- 画像で軽い椎間板変性疑い
- MRI上「椎間板の膨隆」など軽度の所見があり、神経根を圧迫している可能性が示唆。
- 痛みが肩や腕にかけて放散し、筋力低下はわずかだが神経学的検査で陽性。→ 14級と認定され、日常生活に軽度の支障が残ると判断。
- 保険会社提示約80万円→ 弁護士交渉で約180万円に増額した事例。
12級13号が認められた例
- MRIで神経根圧迫明確
- 頸椎の椎間板ヘルニア等が一部確認され、腕のしびれと握力低下が顕著。ジャクソンテスト、スパーリングテストいずれも陽性。
- 症状固定時も神経症状が残存 → 12級13号と判定。
- 後遺障害慰謝料で約290万円(裁判所基準)+ 逸失利益(労働能力喪失率10〜14%)で最終示談金が500万円以上に。
- 事故当初からしびれが顕著
- 追突事故直後から肩〜腕に電撃痛があり、整形外科でブロック注射等を行うも改善が限定的。
- MRI所見はごくわずかだが、症状の一貫性と神経学テスト陽性が決め手 → 12級13号認定。
- 保険会社は当初14級相当と主張したが、弁護士の異議申立で12級へ逆転し、示談金が200万円以上増えた。
高次脳機能障害と診断された例(頭部外傷併発)
- 首痛だけでなく記憶障害
- むち打ち症の診断で通院していたが、頭痛や集中力低下が強く、神経心理学検査で高次脳機能障害と診断。
- MRIで微細な脳損傷が示唆され、最終的に後遅障害7級〜9級が認定され、示談金総額が数千万円規模になった事例も。
- むち打ち単独と思われがちだが、事故の衝撃が頭部にも及んでいた例。
- 再診察による認定の変更
- 初めは「頸椎捻挫」と診断され、短期のリハビリで終了見込みとされたが、物忘れや感情コントロール障害が顕著。
- 別の専門医が高次脳機能障害を発見 → 後遅障害等級が大幅に上がる。
- 医師が頭部検査を行わないままだと見逃されるため、セカンドオピニオンが重要。
弁護士に相談するメリット
- 後遅障害認定の適切な書類整備
病院・接骨院での通院実績や神経学テスト結果、そしてMRI所見などを取りまとめ、14級や12級を狙う。 - 非該当時の異議申立
一度非該当でも、新たな医師の意見書や検査結果を補強し、再審査で認定を勝ち取る事例が少なくない。 - 高次脳機能障害の可能性も考慮
首の痛みに加え記憶障害や集中力低下が見られるなら、脳外傷を疑い、専門検査やセカンドオピニオンを行うよう促す。 - 示談金アップ
裁判所基準で慰謝料・逸失利益を算定し、保険会社の低提示から数十万〜数百万増額を図る。 - 弁護士費用特約
むち打ち事案でも特約があれば弁護士費用負担ゼロまたは大幅に軽減。非該当を14級や12級へ引き上げるメリットが大きい。
まとめ
むち打ち事例・判例を振り返ると、
- 14級認定事例
画像所見なしでも神経学テスト陽性や症状の一貫性で認定され、示談金大幅アップ - 12級認定事例
MRI等で神経根圧迫など明確な所見があると認定確率上昇、後遺障害慰謝料(裁判所基準)約290万円 - 高次脳機能障害と診断されたケース
むち打ちのつもりが実は脳外傷で上位等級を取得、損害賠償金が数千万円規模になる例も - 非該当→異議申立で逆転
追加検査や医師の意見書を取得して再審査、14級から12級へアップなど
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、むち打ち損傷で「非該当」や「14級しか認められない」とされた被害者を支援し、異議申立や医学的裏付けで上位等級を勝ち取る実績があります。保険会社の判断に納得がいかない方や、二次障害が疑われる方はぜひ早めにご相談ください。
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