はじめに
交通事故で肩や鎖骨に衝撃が加わると、肩関節脱臼や鎖骨骨折、あるいは腱板(ローテーターカフ)損傷など多様なケガが発生する可能性があります。これらは上肢の可動域や日常動作に大きな支障をもたらし、家事・仕事の制限につながる場合が少なくありません。特に骨折や脱臼が適切に治癒しないと変形治癒や反復性脱臼が起こり、後遺障害として痛みや可動域制限が残るリスクがあります。
本稿では、肩・鎖骨周辺の代表的な損傷(肩関節脱臼、鎖骨骨折、腱板損傷など)の症状と治療、リハビリの要点、そして後遺障害や示談交渉に与える影響を整理します。事故後、肩が上がりにくい・腕を挙げると痛いなどの症状を甘く見ず、早期に専門医の診断や適切なリハビリを受けることが、後々の保険会社との交渉や逸失利益請求でも大切です。
Q&A
Q1:肩関節脱臼とは具体的にどこが外れるのでしょうか?
肩関節脱臼の多くは上腕骨頭が肩甲骨の関節窩から外れてしまう状況です。前方脱臼が最も多いですが、事故の衝撃で後方脱臼を起こすケースもあります。強い外力が加わり、肩関節が不安定になると反復脱臼のリスクも高まります。
Q2:鎖骨骨折は交通事故ではよくあるのですか?
はい。シートベルトやハンドルに胸を強打したり、転倒で肩を強く打ち付けたりすると、鎖骨が折れやすいです。鎖骨は皮膚のすぐ下にあり、衝撃を受け止める部位でもあるため、交通事故での鎖骨骨折は比較的よく見られます。
Q3:腱板損傷(ローテーターカフ損傷)はどういう症状が出ますか?
肩を支える棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋という腱板が部分的・全断裂すると、腕を挙げる時の痛みや夜間痛が典型的です。重度になると上腕骨頭が安定せず、挙上運動が制限され、日常生活に大きな支障が出ることもあります。
Q4:これら肩周りの骨折や腱板損傷は、手術が必須なのでしょうか?
症状や骨折の程度次第です。鎖骨骨折なら位置ずれが少ない場合は保存療法(バンド固定)で癒合させることもあります。脱臼や腱板損傷でも程度が軽いならリハビリ・装具で改善が期待できる。しかし粉砕骨折や完全断裂など重度の場合は手術が選択されることが多いです。
Q5:肩の可動域制限が残ったり、痛みが長引くと、後遺障害として認定される可能性はありますか?
はい、肩関節の可動域制限や腱板損傷による痛みが慢性化すれば、12級や14級などが認められる可能性があります。たとえば肩を水平以上に挙げられない場合や外転・内転動作が顕著に制限される場合など、客観的検査結果を伴えば後遺障害認定が狙えます。
Q6:家事や育児に支障をきたすほど肩が動かない場合、主婦でも逸失利益を請求できるのでしょうか?
もちろんです。家事従事者としての家事労働が制限され、後遺障害等級(14級〜12級など)が認められれば、家事労働の逸失利益が損害として算定されます。腕や肩が上がらず掃除・洗濯に大きく支障を来す場合など、弁護士が医師の意見書とともに詳細に主張します。
解説
肩関節脱臼
- 症状・原因
- 交通事故で強い衝撃を肩に受け、上腕骨頭が前方や後方へ脱臼する。激痛、関節変形が目視できることも。
- 急性期は整復して固定するが、反復脱臼を起こしやすくなるケースがあり、手術(Bankart修復術など)を検討する場合も。
- 治療方法
- 整復で関節を正しい位置に戻し、三角巾や固定バンドで数週間安静。
- 不安定性が強ければ関節唇修復など手術し、リハビリで可動域と筋力を回復する。
- 後遺障害のリスク
- 可動域制限、痛み、反復脱臼の恐れ → 12級や14級の認定可能。
- 主に「肩関節の機能障害」として等級が検討され、家事・仕事に制限が出れば逸失利益も大きくなる。
鎖骨骨折
- 発生状況・症状
- 転倒や前面衝突で肩を強打し、鎖骨中1/3部や外側端部で骨折が多い。変形や皮下隆起、痛みで腕を動かせないなどが見られる。
- 若年者やバイク事故で発生率が高い。
- 治療方法
- 保存療法(クラビクルバンドなど)で骨癒合を待つか、転位が大きい場合はプレート固定手術も。
- 固定期間が2〜3週間で、その後理学療法で肩可動域を取り戻す。
- 骨癒合不十分で変形治癒となると、外観異常や肩周りの動きに影響を残すケースがある。
- 後遺障害の可能性
- 変形治癒で外観が崩れたり、肩関節可動域が制限されれば12級13号など狙え、「鎖骨変形」で14級程度に留まることも。
- 骨がうまく癒合しない偽関節や痛みが続けば、示談金が増大する要因。
腱板損傷(ローテーターカフ損傷)
- ローテーターカフとは
- 棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つの腱が肩関節を安定化・回旋動作する。交通事故で衝撃が加わり、一部や全断裂するケースがある。
- 腕を挙げる時の痛み、夜間痛、力が入らないなどが特徴。
- 治療方法
- 軽度断裂ならリハビリ中心の保存療法、痛み止め注射や物理療法で様子を見る。
- 大きく断裂している場合は腱板修復手術を検討し、術後は数ヶ月のリハビリを要する。
- 後遺障害と可動域制限
- 腱板損傷が残ると、肩が一定角度以上に上がらない、外転や回旋が困難となり、12級〜14級が認定される可能性。
- 家事・仕事への影響が大きければ逸失利益が算定される。
弁護士に相談するメリット
- 早期リハビリと治療打ち切り防止
保険会社が「軽傷扱い」として3〜6ヶ月で治療費打ち切りを迫っても、弁護士が医師の意見書で症状長期化を立証。 - 後遺障害申請サポート
肩・鎖骨の変形や腱板損傷による可動域制限、痛みの持続を診断書に詳細記載させ、12級や14級を狙う。 - 家事従事者の逸失利益
肩関節脱臼や腱板断裂で家事労働が大幅制限 → 弁護士が家事労働の価値を算定し、賠償金アップ。 - 変形治癒・醜状
鎖骨変形が見た目でも判る場合、醜状障害を主張して追加的に等級認定・慰謝料を請求する戦略も考えられる。 - 示談金の増額交渉
裁判所基準を適用し、保険会社の低い提示と大きく開きが出る。特約があれば費用負担なしで依頼可能。
まとめ
肩・鎖骨損傷(肩関節脱臼・鎖骨骨折・腱板損傷など)では、
- 肩関節脱臼
再発リスク、可動域制限 → 12級・14級認定可能 - 鎖骨骨折
変形治癒で外観異常・痛み残存 → 14級・12級狙い - 腱板損傷
腕挙上困難、夜間痛→ 12級13号・14級9号を取得し得る - 家事・仕事への影響
→ 逸失利益、家事労働の損害が大きくなるケースも
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、こうした肩・鎖骨周辺のケガで変形や痛みが続く被害者に対し、画像検査や専門医の診断を踏まえ、後遺障害認定や適切な逸失利益の算定をサポートし、示談金を大幅に増額させる実績を有しています。事故後、肩や腕が十分に上がらない、痛みが長引く場合は軽視せず、早めにご相談ください。
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