はじめに
交通事故で手や手首に強い衝撃が加わると、手根骨折(手根骨の骨折)、TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷、あるいは腱の部分断裂・完全断裂など、さまざまな障害が発生する可能性があります。特に手首は多くの小骨や靱帯・軟骨が集まっており、ちょっとした骨折でも握力低下やしびれ、可動域制限が残りやすいのが特徴です。こうした症状が長引くと、日常動作や仕事にも大きく支障をきたし、後遺障害として認定されるケースが少なくありません。
本稿では、手・手首の代表的損傷として、手根骨折(舟状骨骨折など)、TFCC損傷(手首の軟骨・靱帯構造の断裂)、そして腱損傷を中心に解説します。いずれの損傷もレントゲンで写りにくい場合が多々あり、見落としによって症状が悪化・長期化するリスクがあります。示談交渉でも「大した怪我ではない」と過小評価されないためにも、医師・弁護士と連携しながら正確な治療・証拠集めを行うことが重要です。
Q&A
Q1:手首にはどんな骨があるのでしょうか?
手首付近には手根骨と呼ばれる8つの小さな骨(舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨・大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鈎骨)があり、それらが手首関節を形成しています。特に舟状骨は骨折しやすく、レントゲンで見逃しやすいことで有名です。
Q2:TFCC損傷とは何がどう損傷しているのですか?
TFCC(Triangular Fibrocartilage Complex)は、尺骨側の手首関節を安定させる三角線維軟骨や靱帯の集合体です。事故の衝撃などで手首を捻ったり強打すると、この軟骨や靱帯が断裂・損傷し、手首の小指側の痛みやクリック音、回転動作の障害が起こります。
Q3:腱損傷というのは、指や手首を動かす腱が切れるのでしょうか?
はい。手首や手指の腱(屈筋腱・伸筋腱など)が部分断裂あるいは完全断裂を起こし、指が曲げられない・伸ばせない、手首が背屈できないなどの機能障害が生じます。損傷度合いによっては腱縫合手術や長期リハビリが必要です。
Q4:これらの骨折や損傷が後遺障害になると、具体的に何級くらいになるのでしょう?
手首の機能障害や可動域制限、腱断裂による指の動きの制限などの程度で、14級(軽度神経症状)〜12級(顕著な可動域制限や痛み)となる可能性があります。神経麻痺が強ければ9級などもあり得るため、詳細な検査と診断が重要です。
Q5:事故で手首が痛み続け、通院は3ヶ月以上になるかも…保険会社に早期打ち切りを言われたらどう対抗できますか?
弁護士が医師の意見書で「まだ骨癒合やTFCC治療が必要」と主張し、治療継続を得やすくします。特にMRIで損傷が確認されれば保険会社も無視しにくいです。弁護士が対抗しないと、3〜6ヶ月で打ち切られるリスクが高いです。
解説
手根骨折(舟状骨骨折など)
- 舟状骨骨折
- 転倒・衝突で手をついた時に多く、痛みは手首の親指側(解剖学的タバコ窩)に集中。
- レントゲンで映りにくい → 見逃しに注意。治療せず放置すると偽関節になり、慢性疼痛や可動域制限が残る。
- 月状骨・有頭骨などの骨折
- 衝撃で手首を強く曲げたり伸ばしたりすると、他の手根骨が割れることがある。
- CTやMRIで微細骨折を確認。固定期間が長くなると筋力低下に注意。
- 後遺障害
- 骨折が癒合せず手首の痛みや可動域制限、握力低下 → 14級〜12級
- 障害が顕著なら仕事・家事に支障をきたし、逸失利益が増額。
TFCC損傷
- TFCCの役割
- 手首の小指側(尺骨頭周辺)の関節を安定させる軟骨複合体。衝撃や捻転で亀裂が入るとこじわるい痛みが続く。
- 回旋動作(前腕回内回外)や手首の尺側偏位で痛みやクリック音が出る。
- 診断と治療
- MRIが最適だが、撮影条件や解像度によって見逃しあり。関節鏡検査で確定診断する場合も。
- 軽症なら装具装着やリハビリ、重度断裂なら関節鏡下手術で縫合・切除を行う。
- 後遺障害認定
- 痛みや可動域制限が残ると14級9号(神経症状)認定される例が多い。
- TFCC損傷の証明は難しく、医師の所見やMRIを丁寧に提出する必要がある。
腱損傷(屈筋腱・伸筋腱など)
- 腱の構造
- 手首〜指にかけて多くの屈筋腱・伸筋腱があり、衝撃で断裂すると指が曲げられない/伸ばせない機能障害が発生。
- 部分断裂なら保存療法、完全断裂なら腱縫合や腱移行術が必要。
- リハビリと後遺障害
- 腱縫合後は長期的リハビリで筋力と可動域を回復しなければならず、保険会社打ち切りを懸念。
- 指や手首の可動域が著しく制限されると12級〜14級に該当する可能性。
弁護士に相談するメリット
- 医療連携と検査促進
弁護士が「舟状骨骨折やTFCC損傷はMRIで検査すべき」などアドバイスし、保険会社に費用負担させる交渉を行う。 - 後遺障害診断書の充実
レントゲンで異常なしとされても、MRIや関節鏡所見、腱断裂のエコー検査結果などを使い正確な診断書を作成。 - 症状固定と示談交渉
まだ痛みや可動域が回復していない段階で打ち切りを押し付けられないよう弁護士が交渉。最終的に12級〜14級を確保し慰謝料・逸失利益を増額。 - 家事・仕事の影響を立証
主婦がフライパンを握れない、指が動かずパソコン入力に支障 → 家事労働・職業労働の制限を具体化し、保険会社に正当評価を求める。 - 弁護士費用特約
手・手首損傷で示談金は数百万円以上に伸びるケースがあり、特約があれば費用負担なしで依頼可能。
まとめ
手・手首の損傷(手根骨折、TFCC損傷、腱損傷など)では、
- 手根骨折(舟状骨など)
レントゲンで見逃しが多く、偽関節リスク → 長期痛みや可動域制限で14級〜12級 - TFCC損傷
小指側手首の痛み・回旋制限 → MRIや関節鏡検査で確認 → 14級神経症状扱いが多い - 腱損傷(屈筋・伸筋)
指や手首を曲げ伸ばしできない → 腱縫合術後もリハビリ必須、後遺障害に該当 - 家事・仕事への支障 → 逸失利益大きくなる可能性
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、手首や手の痛み・しびれが続きながらも「軽傷」扱いされる方をサポートし、後遺障害認定や逸失利益を高く評価させる実績があります。事故後に手の痛みや可動域制限が続く場合は、早期にご相談ください。
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