【下肢の骨折】交通事故による後遺障害等級認定ガイド|脚・膝・足首の機能障害と短縮障害

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はじめに

交通事故において、歩行中や自転車・バイクの運転中に車と接触したり、自動車乗車中に強い衝撃を受けたりすることで、下肢(脚)を骨折するケースは非常に多く発生します。

下肢は、大腿骨(太ももの骨)、膝蓋骨(膝の皿)、脛骨・腓骨(すねの骨)、足首、足指などで構成されており、これらを損傷すると、「歩く」「立つ」「走る」といった日常生活の基本動作に直結する深刻な影響が生じます。

治療によって骨が癒合し、以前と同じように歩けるようになれば良いのですが、残念ながら治療を尽くしても、「膝が曲がらない」「足首が固まった」「脚の長さが左右で変わってしまった」「歩くと痛みが走る」といった後遺症が残ってしまうことがあります。

このように、治療を行っても完治せず、医学的にこれ以上の改善が見込めなくなった状態(症状固定)で残存した障害については、適切な「後遺障害等級」の認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益(将来得られるはずだった収入の減少分)を請求することが可能となります。

しかし、下肢の後遺障害は、関節の可動域制限、骨の変形、脚の短縮、欠損など多岐にわたり、認定基準も非常に複雑です。適正な補償を受けるためには、ご自身の症状がどの等級に該当する可能性があるのかを正しく理解しておくことが重要です。

本記事では、交通事故による下肢(大腿骨、膝蓋骨、脛骨、足関節、足指など)の骨折で残りやすい後遺障害の種類や認定基準、適正な等級認定を受けるためのポイントについて、弁護士法人長瀬総合法律事務所が詳しく解説します。

下肢の骨折に関するQ&A

まずは、下肢を骨折された被害者の方からよく寄せられる疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q1:骨折した方の脚が短くなってしまい、歩くときにびっこを引いてしまいます。これは後遺障害になりますか?

はい、「短縮障害」として等級認定の対象となります。

大腿骨や脛骨などの骨折に伴い、骨が重なって癒合したり、骨の一部が欠損したりすることで、脚の長さが短くなることがあります。

これを「下肢の短縮障害」といい、短縮した長さによって等級が決まります。1cm以上短縮した場合は13級8号、3cm以上で10級8号、5cm以上で8級5号が認定される可能性があります。測定は、医師によるロールレントゲン撮影などを用いて厳密に行う必要があります。

Q2:膝の皿(膝蓋骨)を割りました。骨はくっつきましたが、階段の上り下りで膝に激痛が走ります。

痛みの原因が医学的に証明できれば、神経症状として認定される可能性があります。

骨癒合が完了していても、関節面の不適合(形がいびつになること)や、周囲の軟部組織の損傷により痛みが残ることがあります。

画像検査(レントゲンやCT、MRI)で痛みの原因となる異常が確認できる場合は12級13号、画像上の異常が明らかでなくても、事故状況や治療経過から痛みの存在が医学的に説明できる場合は14級9号が認定される可能性があります。

Q3:足首の骨折後、足首が固まってしまい、正座ができなくなりました。

足関節の「機能障害(可動域制限)」として等級認定が検討されます。

関節の動く範囲(可動域)が、怪我をしていない方の足(健側)と比べて制限されている場合、その制限の程度に応じて等級が認定されます。

健側の可動域の4分の3以下に制限されていれば12級7号、2分の1以下であれば10級11号、関節がほぼ動かない(強直)状態であれば8級7号に該当する可能性があります。

解説:下肢の骨折による後遺障害の分類と認定基準

下肢の骨折による後遺障害は、大きく分けて「機能障害(関節の動き)」「短縮障害(長さ)」「変形障害(骨の形)」「欠損障害(足指など)」「神経症状(痛み)」の5つに分類されます。それぞれの具体的な基準を解説します。

1. 下肢の機能障害(関節可動域制限)

股関節、膝関節、足関節(足首)のいずれかの動きが悪くなった場合です。これを「3大関節」といいます。

原則として、健側(怪我をしていない側)の可動域と比較して判定します。

等級認定基準(抜粋)具体的な状態
第8級7号1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの関節が完全強直(固まって動かない)した場合、またはそれに近い状態
第10級11号1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの可動域が健側の2分の1以下に制限された場合
第12級7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの可動域が健側の4分の3以下に制限された場合

※人工関節や人工骨頭を挿入した場合は、可動域の制限度合いにかかわらず、原則として10級11号以上が認定されます(可動域制限が著しい場合はさらに上位等級の可能性もあります)。

【部位別の注意点】

  • 膝関節: 膝蓋骨(パテラ)骨折や脛骨高原骨折などで生じやすい障害です。
  • 足関節: 脛骨・腓骨の遠位端骨折(足首付近の骨折)で生じやすく、背屈(つま先を上げる)や底屈(つま先を下げる)の動きが重要視されます。

2. 下肢の短縮障害

前述の通り、骨折等の影響で脚が短くなった場合です。

測定は、上前腸骨棘(骨盤の出っ張り)から下腿内果(内くるぶし)までの長さを計測し、健側と比較します。

  • 第8級5号: 1下肢を5cm以上短縮したもの
  • 第10級8号: 1下肢を3cm以上短縮したもの
  • 第13級8号: 1下肢を1cm以上短縮したもの

※逆に、成長期の子供の骨折などで過成長が起き、脚が「長く」なってしまった場合(過長障害)も評価対象となり得ますが、短縮障害とは基準が異なります(例:3cm以上の過長で10級相当など)。

3. 下肢の変形障害(偽関節・長管骨の変形)

骨が正常に癒合しなかったり、曲がってくっついたりした場合です。

偽関節(ぎかんせつ)

骨折部の癒合が止まり、本来関節ではない部分がグラグラと動いてしまう状態です。

  • 第7級10号: 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの(大腿骨や脛骨・腓骨に偽関節があり、常に硬性補装具が必要な場合)
  • 第8級9号: 1下肢に偽関節を残すもの(7級に至らない程度の偽関節)
  • 第12級8号: 長管骨に変形を残すもの(腓骨のみに偽関節を残す場合など)

長管骨の変形

大腿骨や脛骨が曲がって癒合してしまった場合です。

  • 第12級8号: 長管骨に変形を残すもの
    • 大腿骨または脛骨が15度以上屈曲して不正癒合した場合
    • 外部から見て明らかにわかる程度の変形がある場合 など

4. 足指の後遺障害

足の指(足趾)の骨折等による障害は、「欠損障害」と「機能障害」に分けられます。手指と同様に、親指(母趾)は歩行時の蹴り出しに重要な役割を果たすため、他の指よりも重く評価されます。

足指の欠損障害(指を失った場合)

  • 第5級5号: 1足の足指の全部を失ったもの
  • 第8級10号: 1足の第1の足指(親指)を含み2以上の足指を失ったもの
  • 第10級9号: 1足の第1の足指を失ったもの など

足指の機能障害(用を廃した場合)

足指の根元の関節(MTP関節)やその先の関節の可動域が、健側の2分の1以下になった場合などが該当します。

  • 第7級11号: 1足の足指の全部の用を廃したもの
  • 第9級15号: 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
  • 第12級12号: 1足の第1の足指の用を廃したもの
  • 第13級10号: 1足の第2の足指(人差し指)の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの、または第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの

5. 神経症状(痛み・痺れ)

関節の動きや骨の形に基準を満たすほどの異常がなくても、痛みが残ることは多々あります。

下肢の骨折では、骨折部の痛みのほか、足首の捻挫を併発した場合の痛みや、骨折に伴う神経損傷による痺れなどが対象となります。

  • 第12級13号: 局部に頑固な神経症状を残すもの(他覚的所見あり)
  • 第14級9号: 局部に神経症状を残すもの(自覚症状中心だが医学的に説明可能)

弁護士に相談するメリット

下肢の骨折による後遺障害認定は、専門的な知識と経験が結果を大きく左右します。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。

1. 「可動域」と「短縮」の正確な立証

関節の機能障害(可動域制限)は、測定の仕方ひとつで等級が変わります。例えば、10級(2分の1以下)と12級(4分の3以下)では、賠償額に数百万円の差が生じることがあります。

また、脚の短縮についても、単にメジャーで測るだけでは不正確とされる場合があり、スキャングラム(ロールレントゲン)などの特殊な撮影方法で証明する必要があります。

弁護士は、適正な測定方法が行われているかを確認し、必要であれば再検査のアドバイスを行います。

2. 複数の障害がある場合の「併合」判断

下肢の骨折では、「足首の機能障害(12級)」と「骨折部の痛み(14級)」、あるいは「脚の短縮(13級)」など、複数の障害が同時に残ることがあります。

この場合、それぞれの等級をどのように組み合わせるかという「併合(へいごう)」のルールが適用されます。保険会社が提示する等級が、必ずしも正しいルールに基づいているとは限りません。弁護士は、複数の症状をもれなくピックアップし、最適な等級が認定されるよう主張します。

3. 逸失利益の減額に対する反論

後遺障害が認定されると、将来の収入減少分として「逸失利益」が請求できます。しかし、保険会社は「骨折の痛みがあってもデスクワークなら支障はない」「短縮障害があっても靴の調整で対応できる」などと主張し、逸失利益を減額しようとしてくることがあります。

弁護士は、被害者の方の具体的な職務内容や日常生活への支障を詳細に主張し、安易な減額を許さず、本来受け取るべき賠償金の獲得を目指します。

まとめ

下肢の骨折は、歩行という基本的な生活動作に直結するため、後遺症が残った場合の精神的・経済的苦痛は計り知れません。

  • 3大関節(股・膝・足)の可動域制限: 健側との比較が重要。
  • 脚の短縮: 1cm以上の短縮から認定対象。正確な画像診断が必要。
  • 足指の障害: 親指かそれ以外かで等級が大きく異なる。
  • 痛みの残存: 画像所見がない場合でも14級の可能性がある。

「足が痛くて長時間歩けないのに、後遺障害ではないと言われた」「保険会社の提示額が低すぎる気がする」といった不安をお持ちの方は、示談をする前に弁護士にご相談ください。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、交通事故被害者の方の「これからの生活」を守るため、適正な等級認定と賠償金の獲得に向けて全力でサポートいたします。

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