今回公開する動画
チャプター
- 視聴時間:17分
- 00:00:ごあいさつ
- 01:03:むち打ち損傷で想定される後遺障害等級
- 02:27:後遺障害等級が認定された場合の損害額
- 05:18:後遺障害が否定される4つのパターン
- 08:35:後遺障害認定のポイント(むち打ち損傷)
- 16:27:弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポート内容
動画の詳細(このような内容を解説しています)
はじめに
今回はむち打ち損傷で後遺障害認定が否定される4つのパターンについて解説します。
交通事故の多くは追突事故と言われています。
追突事故に遭った場合、被害者の大半は頚椎捻挫や胸椎捻挫など、いわゆるむち打ち損傷を負うことが考えられます。
むち打ち損傷の被害に遭った場合でも、6か月以上通院治療を継続しても痛みが回復しないことがあります。
このような痛みが長期化する場合には、神経症状が残存していることで後遺障害等級が認定される可能性があります。
しかし、むち打ち損傷の被害に遭い、痛みが継続しているといっても、全てのケースで後遺障害が認められるわけではありません。
今回の解説では、交通事故でむち打ち損傷を負った方が後遺障害等級の申請を検討する際に押さえていただきたいポイントを説明します。
むち打ち損傷で想定される後遺障害等級
むち打ち損傷の被害に遭った場合に想定される後遺障害等級は、大きく二つ考えられます。
一つは後遺障害等級14級9号で、局部に神経症状を残すものとなります。
もう一つは後遺障害等級12級13号で、局部に頑固な神経症状を残すものとされるパターンです。
後遺障害等級は1級から14級まであり、等級が大きいほど軽いものとなります。このため、後遺障害等級14級9号の方が後遺障害等級12級13号よりも軽いとされます。
後遺障害等級12級13号と14級9号の違いは、同じ神経症状を残すものであっても、症状が頑固かどうかという点になります。
後遺障害等級が認定された場合の損害額
後遺障害等級が認定された場合、最も大きな違いとしては、損害賠償額が変わってくることが挙げられます。
むち打ち損傷の場合、後遺障害等級14級9号と12級13号の2つが考えられますが、後遺障害に該当しないケースもあり得ます。
後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の2つが加算されます。
例えば、後遺障害等級14級9号の場合、裁判基準では後遺障害慰謝料として約110万円が加算されます。逸失利益については、労働能力が約5年間で5%減少するとされており、年収の約20%が損害となる計算になります。
一方、後遺障害等級12級13号が認定された場合は、裁判基準では後遺障害慰謝料として約290万円が加算されます。逸失利益については、10年間の労働能力喪失が認められるとされており、年収の約100%の損害となります。
例として、年収が600万円の方の場合、後遺障害等級14級9号となると、逸失利益として約120万円が加算され、後遺障害慰謝料と合わせて約230万円の損害賠償が認定されることになります。
一方、後遺障害等級12級13号と認定された場合は、後遺障害慰謝料として290万円に加えて、逸失利益として約600万円が加算され、合計で約890万円の損害賠償が認定されることになります。
このように、むち打ち損傷であっても後遺障害等級が認定されるかどうかによって、得られる損害賠償額が大きく変わることがわかります。
しかし、むち打ち損傷の場合、全てのケースで後遺障害等級が認定されるわけではありません。
後遺障害が否定される4つのパターン
後遺障害等級の認定が否定される4つのパターンがありますが、よくあるパターンは以下のとおりです。
(1)治療期間が短い
一つ目は、治療期間が短い場合です。
例えば、症状が非常に重いにもかかわらず、事故から治療が完了するまでが5ヶ月や3ヶ月程度だと、後遺障害等級はなかなか認められません。特に、むち打ち損傷のような神経症状や痛みが残るケースでは、その傾向が強いといえます。
(2)治療頻度が少ない
次に、二つ目は治療頻度が少ない場合です。1カ月に1回程度、またはそれ以下の頻度で治療を受けていると、後遺障害として認められにくくなります。
(3)治療内容が一貫していない
三つ目は、治療の内容が一貫していない場合です。例えば、事故直後の診断書には頚椎捻挫や首の痛みしか書かれておらず、次の診断書では腰椎損傷が記載されるようになった場合、後遺障害等級の認定が難しくなります。このため、事故直後から治療が終了するまでの間に、症状が一貫しているかどうかを検討する必要があります。
(4)症状が残存していない(と評価される)
四つ目は、症状が残存していないと評価される場合です。例えば、診断書に記載されている症状が回復していると判断されると、後遺障害等級は認定されにくくなります。
後遺障害認定のポイント(むち打ち損傷)
これらの4つの否定されるパターンを押さえた上で、後遺障害等級が認定されるポイントを見ていきたいと思います。
後遺障害等級12級13号と後遺障害等級14級9号の違いは、他覚的所見に基づく神経症状の有無にあります。
ここでいう他覚的所見に基づく神経症状とは、客観的な損傷が確認できるかどうかがポイントになります。
具体的には、骨折や変形障害がレントゲンで確認できる場合などです。
もっとも、MRI検査で損傷が確認できる場合や、むち打ち損傷で確認できた椎間板ヘルニアがあるとしても、後遺障害等級12級13号が認定されるかというと、実際には難しい傾向にあります。
多くのケースでは、椎間板ヘルニアが確認されたとしても、後遺障害として認定される等級は14級9号であることが多いように感じます。
神経症状を立証するポイント
後遺障害等級認定のポイントとして、症状が残存していることを立証することが重要です。
これには、十分な治療期間を経ていること、治療頻度が適切であること、診断書に記載されている症状が一貫していることが求められます。
これらの条件を満たしている場合でも、症状が回復していると判断されると、後遺障害等級の認定は難しくなります。
以上の点を踏まえ、後遺障害等級の認定を受けるためには、症状が残存していることを明確に示す診断書や医師の意見書を提出することが重要です。
また、適切な治療期間と治療頻度を確保し、治療内容が一貫していることを証明できる資料も必要となります。これらを揃えることで、後遺障害等級の認定がスムーズに進む可能性が高まります。
先ほどお話しした4つの否定されるパターンを裏返しで考えると、イメージしやすいかと思います。
2ヶ月や3ヶ月という期間ではなく、6か月間の経過を見ていくことが重要です。例えば、8ヶ月間の治療が必要だった場合、後遺障害等級として認定されやすい傾向にあると思われます。通院の回数や頻度も重要ですが、特に月に1回以上の通院が必要で、その間隔が30日以上空いてしまうと厳しいという印象を受けます。
客観的に何が正しい頻度で回数なのかという明確な基準はありませんが、傷害慰謝料の算定基準を見ると、おおよそ週3回程度の通院が目安となることがうかがわれます。
次に、症状の一貫性です。
事故直後から治療が終了するまでの間、訴えられる症状が一貫しているかどうかが重要です。たとえば、最初は首が痛いと訴えていたのに、途中から首の痛みが治まって、今度は腰の痛みが強くなるような症状の変化は一貫性がないと言えます。
次に、神経症状の内容です。
特に、後遺障害等級14級9号の場合、他覚的所見では証拠が乏しいですが、自覚症状の一貫性が重要になります。どのような痛みを訴えていたかという点もチェックされるポイントになります。たとえば、雨が降ったときに痛むとか、時折痛みが強くなるといった症状は、常に痛みが続いているわけではないということがうかがわれます。
交渉の際には、痛みが継続していることが証明できる必要があります。
神経症状の画像検査に関しては、MRIやCT検査などを受けることが推奨されます。
また、スパーリングテストやジャクソンテストなど、神経症状を確認するテストも受けることが必要です。
特に神経症状が重い場合、腕の太さが左右で変わるかどうかなど、測定してもらう必要があることがあります。この点については主治医に相談し、神経のテストを受けることを検討していただくと良いでしょう。
立証資料
最後に、3点目の立証について説明します。後遺障害等級が認定されるかどうかについて、どのような証拠を用意するかを考慮する必要があります。
後遺障害等級の認定手続きは基本的に書面審査が中心です。
したがって、後遺障害診断書に何が書かれているかが重要になります。
主治医に後遺障害診断書を作成してもらった場合、診断書の内容を確認してもらうことが望ましいといえます。
神経症状のテストを受けたものの、その結果が記載されていない場合、追記をお願いすることも検討してください。
また、自覚症状が記載漏れしていないかどうかも確認してください。
場合によっては、鑑定を行って治療経過や症状の経緯を確認することも必要です。
被害者本人が事故前の日常生活や仕事でどのような変化があったのかをまとめた資料を用意することも有益です。
また、事故による車両の損傷状況を資料として提出することもご検討ください。ただし、車両の損傷状況が軽微であれば、それを提出することが逆に消極的な証拠になる可能性もあります。
以上が、今回のテーマに関する解説です。
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