はじめに
交通事故による高次脳機能障害は、記憶障害や注意障害、遂行機能障害など生活全般に深刻な影響を及ぼし、被害者本人だけでなく家族の介護負担も大きくなります。そのため、後遺障害等級が高位に認定された事案では、慰謝料や介護費用、逸失利益を合わせた高額賠償が認められるケースが少なくありません。本稿では、高次脳機能障害における事例を取り上げ、どのように高額な賠償金が認められたのか、また家族の補償(家族介護料や近親者慰謝料など)についても解説します。
実際の裁判や示談交渉で、被害者側が脳損傷の程度や日常生活への支障を丁寧に立証することで、数千万円~1億円近い賠償が認められたケースもあります。これらの事例を知ることで、保険会社の過小評価に対抗する際の戦略や、家族がどのような補償を請求できるかを理解する一助となれば幸いです。
Q&A
Q1:高次脳機能障害の高額賠償で、具体的にどんな項目が加算されるのでしょう?
後遺障害慰謝料、逸失利益、そして介護費(常時介護を要する場合)が大きなウェイトを占めます。また、家屋改造費(車椅子対応やバリアフリー改修)や家族の精神的苦痛(近親者慰謝料)などが認められるケースもあります。
Q2:重度の場合、裁判所で1億円超の賠償が認められた事例もあると聞きましたが、本当ですか?
はい、脊髄損傷や重度の高次脳機能障害で常時介護が必要なレベルだと、逸失利益+介護費用が長期に及び、1億円超の高額賠償になる判例があります。被害者の年齢や職業収入、介護体制の詳細によって額が左右されます。
Q3:軽度の高次脳機能障害でも、判例で増額が認められた例はあるのでしょうか?
軽度でも仕事や日常生活に大きな影響があることを立証できれば、9級・12級でも相応の慰謝料や逸失利益を得られた事例があります。過去の裁判例等を参照し、弁護士が適切に主張するのが重要です。
Q4:家族が介護している場合、家族介護費用や近親者慰謝料は具体的にどのくらい認められるんですか?
後遺障害等級の程度にもよりますが、家族介護費として1日あたり6,000円~8,000円程度が認定された例もあります。また、近親者慰謝料が認容・加算される判例もあります。
Q5:示談交渉だけでは高額になりにくいと聞きましたが、やはり裁判まで行ったほうがいいですか?
保険会社は示談段階で裁判所基準より低額を提示する傾向にあります。弁護士が「裁判になればこれだけ認められた判例がある」と主張して示談交渉で譲歩を引き出すこともあり、示談で高額解決できる場合もあります。交渉で折り合わなければ裁判を選択し、判例を根拠に高額賠償を狙うケースもあります。
Q6:主婦や無職でも高い等級が認定され、高額賠償を得た事例はありますか?
あります。主婦(家事労働)なら家事従事者としての家事労働の逸失利益が大きく認められたり、無職でも賃金センサスを基準に就労可能性を推定することで高額賠償を得られるケースもあります。若年者なら将来収入を高めに認定し、大きな逸失利益が認められることも考えられます。
解説
高次脳機能障害の典型的な高額賠償事例
- 常時介護が必要(1級・2級認定)
- 頻繁に失禁したり、自己判断で外出すると迷子になるなど、家族が24時間監視・介護しなければならないレベル。
- 判例で介護費用(家族介護料かプロ介護か)、後遺障害慰謝料、逸失利益(働けない状態が続く)などが合計1億円超に達する事例もある。
- 職場復帰が不可能、かつ高収入だった事例
- 事故前に会社役員や専門職(医師、弁護士、コンサルなど)で年収が数千万円だったケース。
- 高次脳機能障害で思考力・注意力が著しく低下し、職務遂行不能に。逸失利益が大きく算定される。
- 若年者で将来長期の収入喪失
- 10代~20代で事故に遭い、記憶・遂行機能障害が残ったため大学進学や就職が困難になった例。
- 67歳(または70歳)までの就労可能期間全体の逸失利益を認め、介護が必要なら将来介護費も加算されて1億円超になるケースもある。
家族の補償(家族介護費・近親者慰謝料)に関する事例
- 家族介護費
- 重度障害で在宅介護を選択した場合、家族が介護を行うときにも1日6,000円〜8,000円程度が認められる事例もある。
- 長期間にわたる場合、将来介護費をライプニッツ係数で計算し、数千万円超規模になる。
- 近親者慰謝料
- 被害者本人の障害が重く家族の苦痛が大きい場合、近親者慰謝料として加算されることがある。
- 参考例:子どもが事故で高次脳機能障害となり、家族が介護に追われるケースで加算された事例等。
- 家屋改造費・車いす・ヘルパー費用
- 重度障害で車いす生活となったり、家のバリアフリー改修が必要な場合、判例では数百万円以上が認められた事例もある。
- 家族介護だけでは難しく、ヘルパーを導入する費用も保険会社に請求可能。
示談交渉・裁判でのポイント
- 医療・リハビリ関係者の証言・書類
- 家族が「介護が大変です」と言うだけでは保険会社が軽視することもある。医師や作業療法士の意見書を得て、「一人で調理や買い物ができない」など具体的支障を示す。
- 介護実態日誌や周囲の証言が採用され、大きな増額に結びつくこともある。
- 専門的交渉
- 保険会社は「脳外傷でも軽度ならそこまで労働能力は落ちない」などと過小評価しがち。弁護士が高次脳機能障害の深刻度を論理的に押し出す。
- 事案により裁判も視野に入れ、高額賠償を得るために粘り強い交渉。
- 早期相談の重要性
- 時間が経つほど事故との因果関係が立証しにくくなる。可能な限り早い段階で弁護士に相談し、神経心理学的検査や専門医の受診を行い、証拠をそろえることが大切。
弁護士に相談するメリット
- 過去判例の豊富なデータ
高次脳機能障害の高額賠償が認められた判例を提示し、保険会社に示談金アップを要求できる。 - 医療ネットワークで誤診を防ぐ
弁護士が専門医やリハビリ施設と連携し、MRI検査や神経心理学検査を受けてもらう。 - 家族の負担・介護費も請求
在宅介護の実態を弁護士が調査し、家族介護費や近親者慰謝料の増額を保険会社に主張。 - 裁判基準での検討
示談で折り合いがつかなくても、高額判例を引用し、適切な賠償を勝ち取る。 - 弁護士費用特約の利用
高次脳機能障害の長期化案件でも、特約で費用負担を軽減して弁護士に依頼が可能。
まとめ
高次脳機能障害の判例・事例を見てみると、
- 後遺障害等級
重度(1〜2級)で常時介護が必要 → 1億円超の賠償も
軽度でも日常生活・仕事に支障 → 9級・12級でも相応の増額事例あり
- 家族の補償
家族介護費、近親者慰謝料、家屋改造費などが数百万円〜数千万円に上る事例 - 医療・検査の充実
適切に検査・リハビリを受けることで裁判所が障害実態を理解しやすい
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、高額賠償が認められた事例や家族介護費の確保、介護体制の充実を支援したケースもあり、被害者の生活再建に向けて最善策を提案します。高次脳機能障害が疑われる場合は、事故後しばらく経っていてもお気軽にご相談ください。
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